今は技術が進んでいるのでよほど重度の虫歯でない限り、歯を残しつつ、治療することができます。しかし、昔の治療と言えば、抜歯やおまじないといった方法が主流でした。今回は、昔の歯の治療に関する話をご紹介していきますね!日本の歯の治療日本において、歯の治療がきちんと行われ始めたのは8世紀頃です。この頃は、目・耳・口・歯は1つの科とし、同じ医師が治療を行うこととなっていました。その後、平安時代になると口科(くちか)が独立し、口中医(こうちゅうい)が生まれます。口中医は朝廷などの上流階級を対象に治療を行い、歯痛を抑えるためにお灸をすえたり、抜歯をしたりしていました。庶民が歯の治療を受けるようになったのは江戸時代以降です。江戸時代に入ると房楊枝という歯ブラシが普及する他、入れ歯師も誕生します。入れ歯師は庶民を対象に、歯痛(虫歯など)や歯くさ(歯周病)の治療として、抜歯や薬剤の塗布などを行っていました。特に歯の治療法として効果が高かったのは抜歯です。しかし、当時は麻酔が普及していなかったため、麻酔なしで引き抜いたり、歯を木槌で叩いて割ったりという方法で、抜歯を行っていました。今、想像するとゾッとしますね。その後、西洋医学や麻酔の知識が入ってくるまではそのような治療法だったようです。では、西洋の歯の治療はどのようなものだったのでしょうか。西洋の歯の治療中世のヨーロッパでは歯の治療は「理容師」が行っていました。内科医が診断し、理容師が外科処置をしていたそうです。今では歯科は専門職ですが、昔は外科の一部として扱われていました。治療方法はやはり抜歯が一般的だったようです。しかし、大衆向けの抜歯はとても特徴的で、クワックスと呼ばれるいかさま医師やペテン師、大道具売りなどが、太鼓やトランペットを鳴らしながら街を歩き、人を集めてショーのように抜歯を行っていました。楽器の音は患者の悲鳴をかき消す目的もあったとかなかったとか……西洋の抜歯には、日本ではなかった器具が用いられていました。患者に傷を加えても、手早く抜歯することに優れた器具で、麻酔が発見される前まではとても重宝されていました。その後、麻酔が発見されたことにより、1844年から無痛の歯科治療が主流となっていきます。おまじないで歯痛を治したって本当?歯痛をおまじないで治すというのは昔からある方法の1つです。平安時代には病気や虫歯は悪霊が取り憑いたことによるものだと信じられ、僧侶や祈祷師が祈祷をしていました。その後、江戸時代になっても神仏に祈るおまじないは存在しています。その証拠として、東京や京都などの城下町には歯の神様や歯痛地蔵(はいた じぞう)が今でも残っていることが伺えます。抜歯以外の治療が少なかった時代において、祈祷は多くの人がしていた治療法でした。また、海外においても歯の神様の信仰は存在します。聖アポロニアという人物は、キリスト教徒迫害の被害者で、抜歯拷問の末に火炙りに処されました。その時、アポロニアは「歯の痛みに苦しむ人は、私の名前を唱えれば、その苦しみから逃れられる」と叫び、息絶えたとされています。その後からアポロニアは歯の神様として崇拝され、人々に信仰されました。このように、麻酔がなかった時代においておまじないや祈祷は各地で行われていました。入れ歯はいつからあった?歯の治療において、長い間抜歯が行われていたことから、入れ歯は古くから存在していました。日本の入れ歯は主に、柘植(つげ)や梅などの木材を使った木の入れ歯で、前歯の部分には動物の歯や骨を利用したものでした。明治初期になるとゴムを使った義歯が主流となり、廃れてしまいましたが、室町時代末期に作られるようになってから、長い間使われてきました。一方、海外の入れ歯は木材を用いず、象牙やセイウチの歯、動物の骨を彫刻したものが主流でした。また、陶材を焼いて作る入れ歯の発明もあり、審美性に優れたものでした。アメリカ合衆国の初代大統領ジョージ・ワシントンも深刻な歯の問題に悩まされ、入れ歯をしていたことで知られています。気になる方はこちらの記事をご覧ください。 くま先生が教える歯で悩んだ偉人たち入れ歯は古くから存在していましたが、高価なものが多く庶民に普及したのは随分後になってからです。それまでは、位の高い上流階級の間で親しまれていました。まとめいかがでしたか?今回、歯科治療の歴史について詳しく知ることができたと思います。麻酔なしの抜歯が主な治療法だったなんて、少しゾッとしますね。現在は、麻酔も器具も充実し、安全でほぼ無痛の治療法が確立しています。治療方法も増えているので、自分にあった治療を受け、歯の健康を保っていきましょう。